近年のアメリカン・ドリームの最たる事例は、配車アプリの「Uber」と民泊の「Airbnb」だと思います。

しかも、この2社の成り立ちは、これから新しいことを始める若者に大きな勇気を与えてくれます。

アメリカン・ドリーム

アメリカン・ドリームとは、アメリカ合衆国における成功の概念であり、均等に与えられる機会を活かし、勤勉と努力によって勝ち取ることの出来るものとされています。

配車アプリの「Uber」は、設立が2009年3月と約10年前に創業。現在の企業価値は720億ドル(約7.8兆円 1ドル­=108.5円)です。

民泊の「Airbnb」も、設立が2008年8月と約10年前に創業。現在の企業価値は293億ドル(約3.1兆円 1ドル­=108.5円)です。

眠っている様々な資産を有効活用しようという「シェアリングエコノミー企業」の代表格です。

2社とも約10年前に出来て、企業価値は1兆円を超えています。テクノロジーが進化し、急速にグローバル化が進む現代では、世の中は10年で変えられます。

10年前、自分が運転する以外の車での移動手段はタクシーかバスでした。

宿泊するときは、当然ホテルか旅館です。

誰もが固定観念でこう考えたでしょう。

固定観念を覆した発想が世界を変えたのです。

ちなみに、「Airbnb」の共同創業者であるブライアン・チェスキーは、約10万円の家賃が払えないという状況の中で、ブログに「部屋を貸してほしい」という提案を掲載したことからビジネスが始まっています。

最初は、何者でもない状態からのスタートでした。

Uber

出典:PYMNTS.com
出典:PYMNTS.com

トラビス・カラニックとギャレット・キャンプにより設立されました。

自動車配車ウェブサイトおよび配車アプリです。現在は世界70カ国・地域の450都市以上で展開しています。

Uberの始まり

「Uber」がまだ世に出る前、

「誰でもスマホで車を呼び出せるサービスをつくる!!」

と言ったそうです。

しかし、大多数の人は、「どうして?タクシーを拾えるから間に合っているよ」

と、思ったはずです。

しかし、タクシーにも問題点は多いです。

・つかまえるために何分も手を上げて待たなければならないときがあります。

・米国では英語が片言のドライバーが増えたので目的地を伝えるのも大変だそうです。

・支払いは基本的に現金なので、持ち合わせがなければATMに立ち寄らなければなりません。

このような面倒なことは当たり前のこととして見逃し、誰も大きな課題と思いませんでした。

「Uber」はこの課題に真剣に取り組みました。

・乗車場所と降車場所をそれぞれ2タップ(スマホ画面を2回タッチする)で選ぶと、早くて1、2分で目の前に登録ドライバーの車が来てくれます。

・支払いは事前登録したクレジットカードで済むのでキャッシュレスで済み、金額はタクシーの半額です。

「Uber」のように、誰もが当たり前と思ってきたことに疑問を投げかけることができるでしょうか?

思いつく人はいるでしょう。しかし、実際に行動し実行に移すところまではほとんどの人が出来ないでしょう。

Uberの強み

Uberには時代も味方しています。

米国で若い世代が免許を取らなくなってきています。

車の維持費やお酒を飲んだら運転できないという不便さを敬遠しているのです。

車を所有することが合理的ではなくなってきているのです。

10年前に比べて、車の免許を持つ人は15%も減ったそうです。

資産を最小限にし、身軽な生き方を選ぶ人が増えてきていることもUberの追い風になっています。

Airbnb

出典:Forbes JAPAN
出典:Forbes JAPAN

ブライアン・チェスキーとジョー・ゲビアにより設立されました。後にネイサン・ブレチャジックが創業メンバーに加わります。

宿泊施設・民宿を貸し出す人向けのウェブサイトです。世界192カ国の33,000都市で80万以上の宿を提供しています。

システムは非常にシンプルで、部屋を貸したい個人と借りたい個人を1泊単位で貸し出せるところです。

Airbnbの始まり

上述したように、共同創業者であるブライアン・チェスキーは、約10万円の家賃が払えないという状況の中で、ブログに「部屋を貸してほしい」という提案を掲載したことからビジネスが始まっています。

当時、犯罪大国のアメリカで、赤の他人の家に泊まる、他人を自宅に泊めるという行為は、

非常識で誰も考えつかなかったでしょう。

周りからは「やめておけ」と散々言われたとのことです。

そういうアイデアにしかビジネスチャンスはないのかもしれません。


Airbnbの強み

Airbnbも時代が味方をしています。

創業した2008年はリーマンショックが起きた年でもありました。

投資目的で住宅を購入したものの売り抜くことができず、空室率が高止まりすることに頭を抱える住宅オーナーがたくさんいました。

そういう人たちが空き部屋を貸し出して利回りを改善する手段をAirbnbは提供したのです。

また、当時はちょうどフェイスブックが個人認証のインフラになりかけていた時期でした。

知らない人を泊めるのは大きな抵抗がありますが、フェイスブックのおかげで簡単なバックグラウンドチェックも出来るようになりました。

時代の流れを追い風に、この時期に大きく成長できたのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

誰もが良いというアイデアは競争になってしまいます。

価格競争になってしまい、大企業には勝てません。

一方で、大企業が新規事業を始めるときは、取締役会でほとんどの役員が賛同しないと何も先に進みません。

大企業の新規事業で、「Uber」や「Airbnb」のような事業が生まれることはまずありえないでしょう。

世界の常識を根本から変えてしまうようなことはスタートアップ企業にしか出来ないのではないでしょうか。

そして、何よりもこの2社に共通している重要なことはタイミングです。時代を追い風にすることで、ここまで急成長できたのだと思います。

※参考:田所雅之(2017)『起業の科学:スタートアップサイエンス』日経BP社