明石ガクトさんの著書「動画2.0」を読んで感じたことを書いています。

この本は「動画」の無限の可能性を感じさせてくれます。

今までの歴史も振り返りながら、未来を冷静に分析しており、非常に説得力のある考え方だと思います。

序章に、学生時代の著者が「君たちは何者だ?」と問われる場面があり、終章では、「僕たちはクリエイター、誰かの世界を変えるきっかけを生み出すヤバイ奴らだって。」という答えを自信満々で今は言えるという終わり方になっています。

「君たちは何者だ?」と問われたときに、どれだけの人が自信満々に自分が何者かを答えることができるでしょう。

自信を持って自分が何者であるかを言えるようになれるよう様々なことにチャレンジしなければならないと思わせてくれる本です。

動画産業革命

動画の産業革命が起きると明石ガクトさんは言います。

この50年、テレビはメディアの王様でした。

かつて映画業界からテレビ業界が生まれたのは、アメリカでは1941年、日本では1953年のことです。今となっては、日本最大のマスメディアとなったテレビですが、当初は映画業界から馬鹿にされていたとのことです。

「あんな小さい画面で一体、何が伝えられるというんだ?」

「画質だってひどいものだ、とてもじゃないが観られたものではないね。」

現代の私たちには、これらの言葉がいかに未来を見誤っていたかわかります。

しかし、その当時の人々には、上記のコメントのような考え方が常識だったのでしょう。

いつも、革命は時代が要請するものだ。

かつて、ヘンリー・フォードがこう言ったそうです。

”If I had asked people what they wanted, they would have said faster horses”

「もし顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らはもっと速い馬が欲しいと答えていただろう」

人々が本質的に求めていたのは、速い馬車ではありません。速い移動手段でした。しかし、自動車を知らない人にその選択肢を想像することはできないでしょう。

同様に動画について明確なイメージを視聴者の誰も持っていません。

それどころかポストスマートフォン時代に訪れた動画の重要性に、映像業界にいるプロの大人たちすらも、まだ気づいてないというのが明石ガクトさんの考え方です。これは時代の要請であるということです。

スマートフォンが、メディア業界や広告業界、そしてコンテンツに与えた最も大きな影響は?

手のひらの中に、誰もがカメラとスクリーンを持つようになったことだというのが明石ガクトさんの考え方です。

有史以来、最も多くのカメラとスクリーンが存在する時代に私たちは生きています。

なぜInstagramがこれほど世界で流行っているのかを逆に考えてみたとき、もし、スマートフォンがない世の中だったら、Instagramは流行っていたでしょうか?

誰もがカメラを持ち、生み出されたヴィジュアルを見るスクリーンがあるから、Instagramは成り立っています。Instagramの本質は写真共有SNSではなく、誰かの人生をヴィジュアルで覗き見る場所です。

スマートフォンという映像コンテンツを楽しめるデバイスが現れて、人類はテレビ以来の新しいスクリーンを獲得しました。

ドコモはかつてなぜ失敗したのか?

かつて、ドコモが「NOTTV」というサービスをやって、886億円の赤字を積んで撤退したことがありました。

フジテレビを含む9チャンネルのテレビ番組や映画が楽しめる、という一大事業はなぜ失敗してしまったのでしょうか?

それは、「アメトーーク!」のような「大きな画面で時間をかけて観る」ことに最適化したテレビ番組や映画を、スマートフォンで見せようとしたからです。

スマートフォンは、ただ画面を小さくしただけではありません。人間が映像をコンテンツに触れる時間のセグメントを細かくしたことが、スマートフォンがもたらした最も大きなインパクトです。

あと5分で家を出ないといけないのに、「情熱大陸」を観る人間はいません。あの番組は、日曜の夜に「情熱大陸」を観てやる気もらうか。とかつぶやきながら、ソファーに腰掛けて観るものです。

動画の時間軸

しかし、スマートフォンは違います。ランチが出てくるまでの間の5分。トイレに腰掛けている間の3分。電車を乗り換える間の1分。そんな細かいスキマ時間の中で、コンテンツに触れる。テレビ番組のような大きい画面で時間をかけて観ることが前提のコンテンツは、スキマ時間に楽しめません。つまり映像と動画の時間軸は、異なったものです。

朝起きて、最初に見るのはスマートフォンです。

ランチタイム、同僚の話を聞きながらもソーシャルメディアのチェックに余念がありません。テレビを消して、お風呂に入り、寝る前に君が最後に見るのはもちろん、スマートフォンです。

このように、スマートフォンが人間の生活を非可逆的に変えてしまいました。テレビが主役だった時代の生活習慣はもう存在しません。映像から動画への変革は、こうした新しい時代の要請によって生まれたものだと明石ガクトさんは考えています。

まとめ

今から数年後、具体的には5Gと8Kが普及するタイミングで、映像と動画のバランスが逆転するでしょう。様々なジャンルがある中で、動画の未来は間違いなく明るいと感じました。
※参考:明石ガクト『動画2.0』幻冬舎