海外では人工知能などを使い、個人の信用力を数値で示すサービスが広がってきています。
今まで価値として可視化出来なかった曖昧なものを、テクノロジーが発展したことで可視化(数値化)できるようになったことが背景にあります。
まさにイノベションの発展がもたらした新しい形の評価方法であり、
データエコノミーは広がりを続けています。
スコアリングの普及
スコアリングとは個人の信用力を数値で示すサービスで、様々な企業独自の採点手法があります。
融資を申込む際、銀行のように勤務先や収入の確認などの書類審査ではなく、主にスマホからの生活データで信用を測ります。
利用者が拡大している地域は金融インフラが乏しい新興国です。世界銀行のデータによると、銀行口座を持っていない人は世界で17億人いるとされています。
しかし3分の2の人達は携帯電話を持っています。つまりそういった人達は銀行からではなく、携帯電話を使って送金や支払いをせざるを得ません。
これはリープフロッグ現象(途中の段階をすべて飛び越して一気に最先端の技術に到達すること)の最たる例です。
スコア融資は従来の金融では測ることの出来なかった信用を発掘し、起業などの機会に繋げられています。
新興国だけでなく欧米や日本でもスコア融資の参入が相次いでいます。
そういった中で中国の「芝麻(ゴマ)信用」に注目が集まっています。
芝麻(ゴマ)信用とは?
芝麻信用は「アリババグループ」の「アント・フィナンシャルサービス」傘下の独立した信用サービス機構。
2015年1月に中国人民銀行が個人信用スコアサービスの開業準備を認めた8社のうちの1社です。
芝麻信用はクラウドコンピューティングと機械学習、AIなどの先端技術によって個人や企業の信用状況に対して評価を行っています。
・クレジットカード、消費者金融、融資、リース、担保ローン
・ホテル、不動産
・レンタカー、旅行
・結婚恋愛
・学生サービス
・公共事業
などに信用調査サービスを提供しています。
「芝麻(ゴマ)信用」 5つの分析要素
①身分属性 学歴や職歴、身分証の情報
②支払い能力 不動産や資産状況
③信用履歴 クレジットカードの返済履歴
④人脈 交友関係や知人の信用状況
⑤消費行動 買い物やサービスの利用履歴
従来型の分析要素に加えて、ネットを通じた購買履歴や交友関係などの生活データを幅広く分析するのが特徴で、利用者は5億人以上いるとされています。
上記の5つの領域について個々人の点数を算出し、総合点数で格付けしています。
信用の高低は点数によって5段階に区別されています。
点数は最低で350点、最高で950点。
700~950 を「信用極好」(極めて良い)
650~700を「信用優秀」(優れる)
600~650を「信用良好」(好ましい)
550~600を「信用中等」(まずまず)
350~550を「信用較差」(やや劣る)
と分類してされています。
一般的な消費者はおよそ600点台。
信用スコアが高いと、どのような優遇を受けることが出来るのでしょうか。
高スコアの優遇措置
600点以上の顧客が受けられる主な優遇措置について
「シェアサイクルの保証金不要」
摩拜単車(モバイク)や共享単車(ofo)などの自転車シェアリング5社では、650点以上の顧客であれば、保証金、利用料金ともに無料(一部地域・一部企業限定)。
「電気自動車レンタルの保証金免除」
スコアが650点以上の場合、神州租車(神州レンタカー)などの保証金が免除される。
「本の貸し出しサービスも保証金免除」
北京や天津など13地域で実施しているもので、1カ月で8冊の本を借りることができる。650点以上の人には、初回の保証金が不要で家まで届く(返却の送料は読者負担)
「雨傘の無料レンタル」
一部地域のファーストフード店やコンビニでレンタル置き傘を貸し出すサービスを始めている。利用方法は、スマホでQRコードを読み取るだけ。
「ホテル予約の際の保証金不要」
中国の一部のホテルでは予約する際に保証金や宿泊料を支払う必要があるが、スコアが高い人は、これが不要となる場合があります。また、旅行会社の中には代金を旅行が終わってからの事後支払とするサービスを行っているところも。
700点を越えるとかなり優良な消費者であるということ。
各種金融ローンの金利優遇、シェアサイクルやホテル、図書館など保証金を免除するほか、一部の国で個人観光ビザ申請手続きを簡素化す ることなどのサービスを受けられるようです。
スコアリング のメリット
マナー向上や犯罪を抑止することが期待されています。
例えば悪事を働いた場合、スコアは下がります。
するとSNSやスマホの決済の利用が凍結される可能性があります。
中国では現金での支払いを断るお店も出てきているため、スマホで決済が出来ないことは圧倒的に不便になります。
バーチャルスラム
一方で課題もあります。
「バーチャルスラム」とも呼ばれる新たな貧困を生み出すとの懸念です。
いったん低い評価を受けると、あらゆる社会サービスから除外され、その状態からなかなか抜け出せなくなることで、格差の固定化を招きかねません。
デロイトトーマツコンサルティングによれば、2030年までにG20内で最大5.4億人のバーチャルスラムが生まれると試算しています。
まとめ
データから生まれるスコアが人生を左右する時代が近づいています。
日本において、スコアリングを身近に感じることは多くはありませんが、
世界のスタンダードへと変わる可能性を念頭に入れなくてはいけません。
SNSの重要度が益々大きくなるように思います。