先月、衝撃的なニュースが飛び込んできました。
衣類畳み機のスタートアップ企業の「セブン・ドリーマーズ」が経営破綻したとの報道です。
斬新なアイデアで総額100億円を超える資金を集め、市場から大きな期待を集めていただけにこのニュースは大きな話題となりました。
近年、活況を呈する「スタートアップ」への投資。
スタートアップを取り巻く熱狂とその舞台裏とは?
セブン・ドリーマーズはどんな会社?
2011年に設立。
<事業内容>
・自動衣類折り畳み機:ランドロイドの開発
・睡眠中の気道を確保する医療器具:ナステントの販売
・高機能ゴルフシャフト事業(2018年に売却済み)
<主な出資者>
大和ハウス工業、パナソニック、KKR創業者:ヘンリークラビス氏、東京大学エッジキャピタル(売却済み)など
会社のHPで紹介されている動画↓
大手企業、有名投資家、有名大学の出資からみて取れるように、かなりの注目を集めていたことが分かります。
足元、スタートアップによる資金調達額は大幅に増えていますが、総額100億円を超える金額を集めることは多くはありません。
いかに注目度が高かったのかが伺えます。
また2016年には経済産業省が有力新興企業「Jスタートアップ」と認定。
日経新聞の調査「NEXTユニコーン」でも26位に選出されました。
セブンドリーマーズの破綻から見えてくる日本のスタートアップ共通の課題があります。
日本のスタートアップの課題
専門外の分野での起業
一つ目は専門外の分野での起業の難しさが挙げられます。
ランドロイドは最初、素材メーカーが母体であり、そこからランドロイドの開発に着手しました。
AIやロボット、画像認識の技術を必要としましたが、経営陣にこうした分野の専門家は少なかったようです。
米国では専門領域のスペシャリストが得意分野で起業するケースが多いとされています。
専門外の分野での起業は、優秀な人材を獲得できるかが分かれ道となります。
また近年のスタートアップにITスキルは必要不可欠なため、IT分野における人材不足が深刻な日本において、IT分野の人材育成は大きな課題です。
複数事業の立ち上げの難しさ
もう一つは複数の事業を同時に立ち上げる難しさです。
同社は自動衣類折り畳み機だけでなく、高性能ゴルフシャフトや医療機器も手掛けていました。
米国のベンチャーキャピタルからは、複数の事業を抱えるスタートアップに対し、焦点がぼけていると判断し出資を断ったとされています。
スタートアップに求められるのは、斬新なアイデアで市場を開くことです。
複数の事業を抱えることで中核の事業への焦点がボヤけてしまうことに注意しなくてはいけません。
大企業からの投資が過熱している
最近はVC(ベンチャーキャピタル)に加えて、エンジェル投資家やCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の設立や投資が活発になってきています。
CVCを含む事業会社によるスタートアップへの投資額は2018年に2174億円となり、5年前の5倍近くにのぼりました。
CVCとは大企業が主体となって出資する機関のことです。
CVCの投資が活況な背景には自己変革できない大企業の危機感があります。
大企業はというと、しがらみや古い習慣から抜け出せず、変革が後手に回りがちになっています。
そこでスタートアップの先進性を取り入れ、既存事業からの脱却を図ろうとしています。
加えて内部留保は過去最高にまで膨れる空前のカネ余りであるため、その出口の一つとしてスタートアップへの資本提携、業務提携が選択されているのです。
CVC投資の課題
価格をつり上げがちなる
大企業は普通の投資家とは異なり、投資先が成長することで得られる金銭的なリターンだけを期待しているわけではありません。
事業におけるシナジー効果も求めています。それが故、投資先企業の価値を高く見積もり多額の出資金をつぎ込む傾向があります。
それが全体的な出資額の相場を上げる要因となっています。
実際にこの数年のデータによると、一部の優良スタートアップに出資が集中していることが分かります。
資金調達額は急増しているものの、会社数自体は横ばいか微減となっているのです。
大企業の経営環境に左右されやすい
成果が見えづらいスタートアップへの投資は、大企業の業績が悪化したときに真っ先に切られてしまう可能性があります。
経済環境の変化によりいきなり提携解消や、追加の支援が受けれなくなることも想定しておく必要があります。
出資後の経営管理
大企業側が十分な準備をせずに出資・提携し、経営管理や指導で十分な役割を果たせていないケースも少なくないと言われています。
米国では専業VCが取締役を送り込むなどして経営を監督し、経営陣の自律性を重視する一方で、緊急時には強い指導力を発揮しています。
真相は不明ですが、セブンドリーマーズは複数の大企業から出資を受けていたこともあり、それぞれの大手企業からの意見をうまくまとめることができなかったのかもしれません。
まとめ
これからも有望なスタートアップ企業は誕生していくでしょう。
それと同時にマーケットの変化や技術の進展は目まぐるしいスピードで進んでいるため、競争も激化していきます。
動くお金の金額を見ればバブルではないかと指摘されることもしばしばあります。
しかし、次世代起業家の活力自体はこれからもっと力強さを増していくように思います。
今後、人生の選択肢に起業を選ぶ人達が増え、起業により経済が活性化していく未来が待っていると思います。