メガバンクが採用を減らし自然減で社員を数万人減らす、10年後地銀の6割が赤字になる、証券会社が軒並み減益、売れ筋保険商品に対する規制など、

金融機関に関してネガティブなニュースが飛び交っています。

これは一時的な要因が原因ではありません。
今後も金融機関を取り巻く環境は悪化すると思います。

今、金融機関で何が起きているのか?

何故このような事態になってしまったのでしょうか?

情報のコモディティ化がもたらした影響

金融機関の経営環境が悪化した要因の一つとして、スマホが急速に普及したことが挙げられます。

誰もが好きな時間に、どこにいても情報を得ることが出来るようになったことで、情報がコモディティ化してしまいました。

昔は情報に関して金融機関がいち早く知ることが出来たわけですが、現在では一般人が手に入れる情報の質とスピードに大差はありません。

例えばこんな情報も簡単に見れるようになりました
・会社の財務内容
・プレスリリース
・税の取り扱い
・経済統計
・リアルタイムの値動き(株式、為替)

情報自体に付加価値を付けることが難しくなったのです。

金融機関のメインの収益源は有価証券の販売に依存しています。

銀行は傘下に証券会社があったり、保険の販売が出来ますし、証券会社もグループ内で預金を扱うようになっており、垣根がほとんどありません。

日本の法人は空前の金余り状態であり、預金金額は過去最高となっています。

それが銀行の本業である融資が低迷する原因の一つとなっており、銀行が有価証券の販売に力を入れざるを得ない理由となっています。

世代交代が招く不安

現在はネットを使わない世代から収益の大半を稼いでいます。

高齢者はネットを使いこなせる人が少ないため、営業担当者やコールセンターを経由して株式や投資信託等の金融商品を購入しています。

しかし高齢化により年々取引をする人が減っています。

今後世代交代に伴い、対面型の金融機関はネットを活用する世代と、ビジネスをするのは困難になるでしょう。

若い世代を中心に金融リテラシーは以前に比べ格段に高まっています。

その中でネットに比べ遥かに高い手数料を払い、対面型の金融機関を通じて金融商品を購入する人が激減することが危惧されています。

現に売れ筋の投資信託を対面型金融機関で購入すると3%の手数料がかかるのに対し、ネット金融機関では購入手数料が0%のものが存在しています。

同じ商品なのに、手数料がこれだけ違うだけの付加価値を対面金融機関が提供出来ているかは疑問です。

フィンテックの台頭

従来のネット証券・ネット銀行・ネット保険に加え、テクノロジーの進化により、

キャッシュレス・クラウドファンディング・ソーシャルレンディング等のフィンテックが台頭してきていてブローカー(代理業)の必要性が急速に低下しています。

フィンテックが金融の在り方を再定義する

フィンテック(FinTech)とは、Finance(金融)Technology(情報技術)から出来た造語です。

相次いでスタートアップ企業がフィンテックサービスをリリースしています。

当たり前だった固定観念が破壊されつつあります。

これからは個人間でのお金のやり取りが急速にシェアを伸ばしていくでしょう。

バックオフィスは戦々恐々

バックオフィスはより深刻な事態です。

足元でRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の発展により、人の行ってきた仕事を機械が代替し始めています。

単純作業は一番最初にAIによって置き換わるわけです。

バックオフィスにいる人が配置転換で営業職になることが予想されており、中には営業経験のない人もたくさん含まれているでしょう。

経験のない営業の世界に足を踏み入れなければいけないのは、あまりに酷な話です。しかしこれが現実に起こります。

金融庁からの指導

会社の理念が社員に浸透していないの現実です。

一般的に金融市場の発展を通じて顧客や社会の発展に繋げることが理念の一つとして挙げらています。

しかし現場では手数料市場主義が根強く残っています。

求められる顧客本位の運営

これに対し、金融庁はこの数年、厳しい姿勢で金融機関を監視・指導しています。

フィデューシャリー・デューティー(顧客本意の業務運営)を徹底するよう命じられています。

先日メガバンクの1つがノルマを撤廃することを発表しニュースになったばかりです。

しかしノルマ廃止は金融機関で今始まったことではありません。

ただ「ノルマ」が「目標」という言葉に置き換わっただけで、本質は変わっていません。

建前だけでなく本質的な姿勢を変えなければ、金融機関として必要とされない局面にきています。

転勤制度の弊害

テクノロジーの進化によって環境が変化することは数年前から大方予想出来ていました。しかし変化に対応しきれていません。

変化に対応出来なかった理由に転勤制度も影響しています。

金融機関の幹部候補社員といえば転勤が付きものです。

大手になれば全国転勤が当たり前に残っており、銀行は2年〜3年の周期で転勤があると言われています。

ここで重要なポイントなのは、短い在任期間と分かっていて顧客のために長期的な観点で提案をしているのか?ということです。

短期的な思考で、いいビジネスは出来ない

答えは「出来ていない」です。

短期的な思考の人間がほとんどで、自分の在任期間のことしか考えていない人間ばかりです。

自分の評価・出世にばかり意識は向いています。

顧客より自分のためが本音でしょう。金融機関は、ヒエラルキーの象徴的な業界です。

こんな体制では激動する社会の中で生き残れるはずがありません。

社員のスキルアップに注力

大手金融機に勤める知人の話によると、この危機的な状況の中で、会社側は社員一人一人のレベルアップが不可欠と判断し、

CFPや簿記、中小企業診断士などの資格取得を推奨し始めているようです。

もともと自己研鑽に力を入れる社員は少なく、自分は優秀だと思い込み会社の看板に頼っていることすら気付いていない状況のようです。

それは昔から金融に入れば安泰という過去の名残りが残っているからではないかと考えられます。

過去の栄光を捨てなくてはいけない

地方では地銀に入社することで、地元の人からは一番良い会社に入ったねと誉められる位です。

確かに数年前までの学生の就職人気ラインキングの上位には銀行が名前を連ねていて、銀行に入行出来れば安泰だという時代が確かに存在していました。

その安心感は中堅からベテラン世代に無意識の中に醸成されているため、自己研鑽を怠る結果に繋がっていたと推測されます。

資格勉強をすることは重要だと思いますが、社員のレベルアップだけでは、業績を劇的に変えるほどの効果は乏しいでしょう。

今後、知識もAIに置き換わっていくからです。

まとめ

今後リストラが予想されるとともに、大量の転職者が出てくると思います。

特にミレニアル世代は会社から去っていくでしょう。高い給料で人材を引き留めることは既に限界にきています。

そもそもミレニアル世代は、お金だけに働く意義を感じる世代ではありません。

大事なことは社会と顧客への貢献のやりがいを示し、実践する体制を整えることです。建て前の企業理念だけでは人はついていきません。

これを実践出来る会社や人材でないと、社会から受け入れられない時代に変化しているのです。金融機関に限った話ではありません。

令和の時代の幕開けです。

会社に依存する時代ではありません。

今日から明るい未来に向けてスタートを切っていきましょう。